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春にして君を離れ [Christie]


春にして君を離れ

実はこれはクリスティーのミステリーものではないんです。
メアリ・ウェストマコット名義で出され、四半世紀以上自身が著者であることを
漏らさないようにしたことで有名な作品なんです。
ミステリーだと思って買った読者ががっかりしないようにって。
でもですね、正直、殺人より何よりもこわかったです。
人間の感情ほど、目にみえるものが全てじゃないってことかな?

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…女の愛の迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。


ただの恋愛小説なんだろーか?とか、私はなんの予備知識なく読んだので、
終わったあとのなんともいえない虚無感というか、哀しさに圧倒されました。
こんな風に書くとおおげさに思われるかもしれないけど、
何もかもうまくいっているこの目の前の幸せが全て違うとしたら?
なぜ、夫は自分のことを「Poor little Joan」と呼ぶのだろうか?
なぜ夫は最終的にはにっこり笑って自分の言う通りにするのだろうか?
なぜこども達は私を蔑んだような目でみるのか?
そんな疑問が次々とうかんできます、でも気のせいだろう...と。
そして旅行から帰ってきた自分を夫はどう迎えてくれるのだろうか?
自分は一人ぼっちじゃないと思う、そして夫はぼくがいるよと言ってくれるが...
最後の夫、ロドニーの言葉はそれは優しさなのか残酷なのか?
よくわかりませんでした。解説にもあったけど、それはヒトによって感じ方が違うらしい。
私はとても怖く残酷な小説だと思いました。女性だからかな~?


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象は忘れない [Christie]

やはりポアロものでございます。晩年クリスティーものです。
ミセス・オリヴァが突然女性にヘンなことを聞かれてポアロに相談をします。
「あなたが名付け親になったあの娘シリアの両親はどっちがどっちを殺したの?」と。
なんともぶしつけな質問であるけど、10数年前の事件?事故を調査することに…
「象のように」記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探ります。
昔のことであるけれども、人々の忘れていない記憶を辿って事件を解決する。
誰かが全てを覚えていればいいけど、そうはいかず。
何気なく言ったことがポアロにはひっかかり…真相をあばいていくのです。
シリアの両親はピストル自殺をしたような感じで二人とも倒れていたのです。
結局は事故として扱っているけど、なぜ今ここで真相を知る必要が。
興味本位から「象さがし」をはじめているけど、実はそこに愛や憎しみが。
でもですね、実はワタクシ、2/3ぐらい読んだら何となくこうだろうと思いました。
そして全く嬉しいことにあっていたのでした。もちろんアチコチにふせんがあって、
ポアロがそれを気にしているので、ヒントはいっぱいあったけど。
飛行機の中でもんもんと読んでおりました。

象は忘れない

象は忘れない

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫

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ゴルフ場殺人事件 [Christie]

ポアロものですが、友人ヘイスティングズと奥様のなれそめの話でもありますね。
フランスの海岸にいる大富豪からのSOSの手紙を受け取り、そこへむかったポアロ達。
そこでは手紙を書いたルノール氏はすでに亡くなっていた。一緒にいた夫人の証言によると、
外国人風の二人組におそわれたという。強盗目的の殺人?
しかしSOSの手紙は一体なんだったのか?そして凶器は息子の特注ペーパーナイフ。
なぜゴルフ場...とあるのかというと、死体がそこで発見されたからなんですがね。
皮肉にも自分の敷地内の自分が建設中のゴルフ場で。
殺人には動機が必要であり、遺言状からすると夫人、息子があやしく感じるが、
2週間前に書き換えられ、ほぼ全てが夫人にいくことになっている。
すると夫人が?となるが、夫人もその二人組みに猿ぐつわをさせられ、
直接はできない。すると共犯者がいるのでは?やはり息子なのか。
しかし息子は数日前に南米に行っているはず、運転手もその日はおらず、
秘書も不在であった。でも召使いの話だと殺される晩に女性の訪問客がいた。
そしてその女性とは近くに娘と住んでいるマダムではないかという。
ルノール氏は誰かに恐喝されていた感じもうかがわせ、ますますナゾが。
そんなおり、浮浪者風の死体がまた発見され、凶器は同じペーパーナイフ。
夫人の証言は本物か?しかしポアロはルノール氏の死体を確認した時の、
驚愕具合は真実だと思われるという。なにかを隠しているようにもみえるけど。
...とダラダラと謎ばかりと書いてみましたが、夫人の精神力の強さ、
マダムの謎に包まれた妖艶さ、そしてその娘の不安げな様子。
ヘイスティングズはある美少女を女神というがポアロの見解は違う。
猟犬のようにかぎまわるパリ警視庁の刑事、ジローとのたたかい?も見物ですが、
ポアロがヘイスティングズのことを何かと心配しているのもおもしろい。
意外な過去の事件がキーになっているので、オリエンタル急行...みたいですが、
ポアロがいきいきと自分勝手にやや滑稽にみせてもやはり自信家なのでよい。
犯人は意外といえば意外。でもポアロにしてみれば最初から疑っている。
あちこちにふせんがはられていて、さすがクリスティーと思いました。
ゴルフ場殺人事件 ゴルフ場殺人事件


愛国殺人 [Christie]

かなり久しぶりに書いてみます。
原題はThe Patriotic Murdersなので邦題はほぼ正解ですよね。
でも「愛国的」という観念がよくわからないのでありました。
国を守る、国の要人、諜報員とか?はてなでございます。
でも内容は難しくなく、こんな解説がついています。
「どんな人間でも自分がみじめに思える場所がある。
歯医者の治療台はその最もたる例だ。むろん灰色の脳細胞を持つ...」
てな具合で名探偵ポアロもいやいやながら歯医者に通っているのでした。
そして意を決して歯医者に行ったあと、無残にもその歯科医が殺されてしまい、
有無をいわず、捜査に協力するわけとあいなりました。
その日はポアロの他に元女優や、銀行頭取、名前の言いにくいギリシャ人と
何人か患者がいる、そして一番最後の患者はそのギリシャ人。
容疑者となるのは、歯科医のパートナーや秘書やその恋人などなど。
ピストル自殺にみせかけた殺人事件、ギリシャ人には完璧なアリバイがあり、
捜査が難航している間に次の失踪者があらわれ、次の犠牲者が。
なんのために誰が歯科医を殺さなくてはならなかったのか?
読み終えてみると、すごく単純な理由というか、気の毒というか。
それぐらいポアロにしてみればくだらない殺人の動機だったわけで。
ポアロが犯人にこう言います。「私の携わっているのは自分の命を
他人から奪われない、という権利を持っている個々の人間に関することです。」
愛国、国を愛する、IRAという言葉も出てきており、さすがイギリス。
何かがすりかわる?とかスパイ映画みたいな感じになりますが...
愛国心から人を殺すというのは、やはり理解しがたいことです。
でもそれは表向きのいいわけで、ポアロは信念をもっているのでした。
ところで、ポアロ物って女優が出てくることって多いよね~
愛国殺人 愛国殺人


ブラック・コーヒー(小説版) [Christie]

クリスティーのオリジナル戯曲の小説版です。
科学者であるエイモリー卿の読書室で、事件は起こりそして解決をします。
舞台用の小説だから、ひとつの場面で終わるわけなんですが。
卿の開発した超極秘書類を誰かが狙っている?というわけで、
エルキュール・ポアロが週末訪れるはずだったのに、事件はその前夜に。
(じゃないと面白みはないですけどね)
そして助手?のヘイスティングズも同行し、ちょっとマヌケな役どころ。
どうもその書類というのが、「化学式」のようであり、
ズバリは書いていないけど、どうも歴史を動かすぐらいの代物。
つまりは核に関わるモノなのかなと思いつつ、実際にその書類は盗まれます。
しかし卿は「誰だか知らんが部屋の電気を消す間に返してくれ」と
いうのでした。そして事件は起こるわけなんです。
食後に飲んでいたコーヒーがやけに苦いねと卿は話していたのですが、
暗い間に、封筒に入った紙帰ってきたが、卿は亡くなっていた。
死因はどうもコーヒーに混ざっていた毒物が原因のようで。
クロード・エイモリー卿の息子そしてその妻、妻はイタリア人の
訪問客カレリ博士が来てから様子がおかしいのです。
あとはサークロードの妹、姪、秘書、かかりつけの医者、執事と、
登場人物は限られており、その時、読書室にどこに居たか?と
少しずつあきらかになっていきます。
いかにも怪しいのは急にやってきたイタリア人の博士、妻はどうして不穏になる?
みなの場所は確定できて、いつ誰がどうやって薬物を混ぜたのか?
とギモンを投げかけると、ミステリーって素晴らしいと思いますね。
ポアロはこの犯人はとても知能にたけていて、自信満々の人物だと…
それで何となくこの人かな?と思う人がやはり犯人でした。
つまりは戯曲用なので、あまりにも突拍子もない人でも
こまるわけなのかしら?と勝手に分析。それとも私が疑り深いだけ?
  
ブラック・コーヒー (小説版) ブラック・コーヒー (小説版)

白昼の悪魔 [Christie]

ポアロ物ですね。ところで白昼てはくちゅうと読むらしいです。
地中海の避暑地の島で、元女優が殺されてしまいます。
浜辺に横たわって日光浴をしているのか思いきや…
そしてたまたま偶然、居合わせたポアロくんが、
犯人探しに乗り出すのですがね…最初、滞在客は全く
関係のない人達かと思いきや、何だか色々複雑な事情が…

殺された元女優の今の旦那とその連れ子、そして旦那の古い女友達、
そして元女優の愛人らしい若い男とその妻、どれも怪しいですね。
しかも連れ子と継母はあきらかに仲が良くないとなると、
サガンの「悲しみよこんにちは」をちょっと思い出しました。
そうすると犯人は継母を恨んでいる年頃の娘か?
どの人もそれなりの殺人の動機がありそうだんですが、
どの人にも完璧なアリバイがあるわけでした。

そして、おーそう来たか!と思わせるようなポアロの謎解きが
始まるのでした。ですがこの話は大ドンデン返しというわけでもない?
みなに完璧なアリバイがあるから、迷宮入りしているのだけど、
実際に犯人がわかると、案外ストレートな動機なんだなと思います。

人間にはドロドロした欲があって、それを阻害されるのを拒む。
阻害しきれない時に、殺意が生じるわけなんです。
お金に対する執着、恋愛感情のもつれ、若気の至り、
そんなところをポアロは冷静にみて、そしてナゾを解いてゆくのでした。
白昼 under the sun まっぴるまの爽やかな時間の悪魔という意味かな?
  
白昼の悪魔 白昼の悪魔

アガサ・クリスティー [Christie]

突然ですが、私はアガサ・クリスティーが好きです。
全部読破したというにはまだほど遠いですが、
一体、何冊あるのだろう?とみたら40冊弱ありました。
それをちまちま読み直しています。
だいたいどの本も2回ぐらいずつ読んではいるのですが、
今度は読んだ度に感想を書こうと思います。
もちろん、犯人をズバリかこうなんて思ってません。
昔は、エゴの塊り、自信タップリのエルキュール・ポアロは
嫌いだわと思っていたのですが…年を重ねるにつれて、
このポアロという人物がとても魅力的に感じました。
でも、今日は立ち上げ宣言のみ。

あれーこのブログはいつからマジメになってしまったのか?